3月のライオン (1) (ジェッツコミックス)


【評価】 平均評価: 4.5/ 総数: 39件
[4点] 羽海野チカの本領は猫と料理といっても過言じゃない
喪失と再生と癒しの物語。
などと言ってしまえばいまどき使い古された感ただようが、全体に流れるぬる〜くまったりした空気と体温が心地よい秀作。主人公は天才棋士・零。幼い頃家族を事故で亡くし父の友人のプロ棋士に引き取られた孤独な少年。

家もない。
家族もない。
学校にもいってない。
友達もいない。
何もない。

義理の姉からそう酷評された零の孤独な日常がまず淡々と描写される。
カーテンのない部屋に射し込む朝日、からっぽの冷蔵庫。
三姉妹との心温まる交流と対比し、その孤独感を炙り出す演出が巧い。
特に三姉妹の残り物を貰った零が、ベランダに腰掛けて食パンにからあげを挟み食べるシーンは秀逸。だってパンだよ?素材のままだよ?それに挟んで食べるんだよ!?寝起きのぬぼーっとした顔で!焦点の合わない虚ろな目で!
他にもいいシーンは沢山ありましたが、あのシーンで一番零の乾いた孤独が伝わりました。
可愛らしい三姉妹の他にも個性的な先輩・担任、ハチクロの森田さんをメタボにしたような超強烈な個性の自称親友候補・二階堂など、零を取り巻く個性的なキャラ達のやりとりが楽しい。実に表情豊かでふくふくしい猫たちにも注目!
出てくる料理がどれも最高に美味しそうなのもこの漫画の特徴。読んでるとおなかが好きます。
何も無いからこそゼロから始められる零のこの先の成長に期待。 (2008-05-14)
[5点] ただただ、先が楽しみ。
ハチクロが好きで読んでみましたが、マジで面白いです。

ハチクロもそうでしたが、羽海野先生が楽しみながら描いてるのがわかる。
少女誌から青年誌に移り、描写がとても写実的になり、より現実味が増して。
でも所々持ち前の楽しくて面白いところもあり、かなり重い話なのにとても読みやすく良い作品だと思います。

この一巻はまだ序章で、おそらくこれから主人公や周りの人々が何かを得て幸せへと進んでいくのだろうと思います。

次巻がとても楽しみです。 (2008-05-14)
[4点] 答えのない問いを求める物語
 孤独な将棋さしを題材に自分を探していく物語。

 70年代が「大人に手の届かない自分」に対する焦りやジレンマ、80年代が「満ち足りているが目標のない自分」のモラトリアムを主題にすることが多かった少年漫画の世界で、90年代以降は「空っぽで何もない自分」をモチーフにされることが増えてきた。当作はそういう一連の流れの中にあるものだ。
 しかし現代作品の多くが「空っぽな自分」を声高に強調する、いわば赤子の泣き声のような「(愛や夢を)よこせよこせ」の強請たかりであることが多いのに対し、当作は穏やかに孤独を主張する。

 その題材として、他人が助けにくい世界である『将棋』を選んだという所が素晴らしい。実力以外は何も通用せず、チームプレーもない世界に主人公を追い込んでおいて、物語自体は淡々と優しく進んでいく。このギャップが孤独感を更に生む。
 勝負師と孤独という点に重点を置いた囲碁・将棋漫画は今までも数あったが、個人競技+いつ失業するかわからないという、不安定さの象徴として将棋に視点をおいて、なおかつそれ(将棋自体)が物語の中心にはないという枠組みはちょっと男性作家には思いもつかない所だ。これは確実に新しいといえる。

 物語の結論自体は、各年代のモチーフがそれぞれそうだったように、大人になること(大人の意味は様々だろうが)でしか解決しない。いわば答えのないものだが、そこに至る過程こそに意味がある。いわば一話一話が一つの回答欄のようなものだ。
 主人公の小さな成長をまとめて読むも良し、毎回の回答だけに一喜一憂しても良し、そういう作品だと思う。 (2008-05-09)
[5点] 凄い。
ハチクロが終了して寂しかったのも束の間、最新作を発見したので買ってみました。ハチクロもそう、以前にたまたま読んだスピカという短編も、そしてこの3月のライオンも、本当にうみのさんの感覚が、私はピッタリ大好きです。きっと、よしもとばななさんが好きな人なら、好きだと思います。道が暗い時ほど、小さな光がよく見える。あたたかい手作りのご飯とか、家のあかりとか。辛い時ほど、そういうことが心にしみるんだと思います。私はうみのさんの書く、この小さなあたたかさや幸せが大好きです。途中から、涙が止まらなくなりました。ほんとに、日常を書いた話でここまで人の心を動かせるのはすごい!!
うみのさん、ありがとうございます。これからもずっと、読み続けます。 (2008-05-02)
[5点] 優しさの足し算
前作『ハチミツとクローバー』が甘酸っぱい青春の苦悩や光を瑞々しく描いていたのに対し、本作に感じたのは痛みと温もりです。

主人公は零という名の高校生プロ棋士。
家族との死別、才能に対する妬み、勝ち進む度に大切な人を傷つける痛み…
そんな孤独な零を唯一迎えてくれる、温かい下町のような町に暮らす一家。
その一家もまた、けして甘くはない孤独と痛みを抱えながら生きていますが
ゼロも足し算をすれば数は増えていくように、
零と一家の足し算で優しさや温もりが充足していくことを願ってしまいます。

プロ棋士の世界というハチクロの作風から少し想像できないような堅いテーマですが
羽海野テイストのギャグとかわいらしさは健在。
緩急のつけ方と感情を描くのが上手い作家さんですね。
ココロがからっぽで優しさに触れたくなった時にぜひ開いてみてください。 (2008-04-28)
【関連商品も見たい!】
 ・ 蟲師 9 (9) (アフタヌーンKC)
 ・ ハチミツとクローバーイラストレーションズ
 ・ 東京マーブルチョコレート―ハロー、グッバイ、ハロー。 (ワイドKC)
 ・ もやしもん 6―TALES OF AGRICULTURE (6) (イブニングKC)
 ・ 君に届け 6 (6) (マーガレットコミックス)

Tag : 羽海野チカ